水道事業の新しい形態でも注目される
川井浄水場の現場責任者として、
市民のための水づくりを担う。
メタウォーターサービスは、メタウォーターグループの中で浄水場や下水処理場の運転・維持管理を主な業務とした会社で、私は横浜市にある川井浄水場の現場業務責任者として、適正な水ができているかどうかを常に管理し水質や運転の責任を担っています。
川井浄水場の水源は山梨県から神奈川県に注ぐ道志川で、そこで取水した原水を高低差を利用してポンプを使わずに浄水場まで運んでいます。
浄水場ではろ過工程でごみや不純物を取り除くのですが、この川井浄水場ではそのろ過工程で、セラミック膜つまり陶器と同じ材質でできたフィルターでろ過しているのが特徴です。時間をかけて砂でろ過するこれまでの方式に比べ、セラミック膜を使うことで濁度(だくど)の高い濁り水でも高速でしっかりろ過することができます。
また今回、メタウォーターではPFI*という新しい業務委託方式でこの施設の運転・維持管理を任されており、20年間という非常に長い期間でこの事業を請け負っています。こうすることで、業務での裁量の余地が増え、単年度契約ではできなかった設備の改良が可能になるなど多くのメリットがあるのです。*PFI:施設の設計、建設、維持管理、修繕などの業務について、民間企業の資金とノウハウを活用して包括的に実施する手法
刻々と変化する取水地の水を監視し
災害の際は、先の状況を見据えながら速やかに対応する。
水道水の元となる原水の状態は日々変化します。たとえば大雨やダムの放流などがあると、泥が巻き上げられて濁り水になるのですが、私たちは高濁度の原水が来ても確実に処理をして、普段と同じ水を出し続けられるよう努めています。
2019年9月に台風19号が関東地方を直撃しましたが、その上陸の時も、大雨で原水が濁ったり、地域の停電のため緊急時用自家発電設備への切り替えが発生する中、刻々と変わる状況に運転員とともに対応しながら、横浜市への報告などに追われていました。浄水場の能力的な部分に不安はありませんでしたが、周辺の道路に被害があれば、水処理に必要な薬品や自家発電用の燃料の補充ができなくなる懸念があり、そこが心配でした。
また大雨によって、川底の地中に含まれるアンモニアが水流で巻き上げられ原水に混じってしまうことがあるのですが、そうなると水の衛生状態を整えるための塩素の消費が10倍以上にも増えてしまうため、すぐに対応処理をしなくてはなりません。結果的に当時はそのような状況にはなりませんでしたが、台風が過ぎた後も数日間は、24時間体制で浄水場に詰めたままで気が抜けませんでした。
続ける。浄水プラントの安定運転を。
水というライフラインを守るために。
PFIの先端事例での経験を、
日本の水道事業の向上へとつなげたい。
私の「続ける。続くために。」は、「続ける。浄水プラントの安定運転を。水というライフラインを守るために。」です。
蛇口をひねればいつもと同じ水が出る。使う人にとっては当たり前ですが、この当たり前の安心・安全が続くことこそ、私たちの生活に欠かせない条件だと思います。ですから私は、職場の仲間とともにライフラインを支え守っていくこの仕事に誇りを持って続けていきたいと思います。
川井浄水場は、日本初の浄水場施設全体を対象としたPFI事例として、その運営も注目されています。20年という長期にわたって事業を継続管理していく中では、災害の発生など想定外の出来事も起こりえますが、この川井浄水場での運転実績やトラブル解決のノウハウは、今後の浄水場の建設や運営に反映され、さらに効率的なサービスを提供する基礎になります。近代水道発祥の地である横浜市から日本各地の水道事業の改善につながる貢献ができる、それは非常にやりがいのある仕事だと感じています。
川井浄水場
所 在 地 | 横浜市旭区上川井町 |
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浄水能力 | 172,800m3/日 |
横浜市は日本で初めて近代的な水道を整備した近代水道発祥の地である。その横浜市に3つある浄水場の中で、最も歴史のある施設がこの川井浄水場。2014年4月にセラミック膜によるろ過方式を採用した最新鋭の浄水場に生まれ変わり、主に市内西部方面への給水を担っている。
川井浄水場