環境・先進技術の開発
新技術開発の変遷
水を取り巻く環境は日々変化しており、国や地域によって課題もさまざまです。
当社は、設立母体である日本ガイシ株式会社、富士電機株式会社の時代から、水・環境インフラを支える企業として50年以上にわたり、さまざまな技術開発に取り組んできました。
両社の遺伝子を引き継いだ当社が設立された2008年以降も、気候変動や自然災害への対策、人口減少に伴う財政難や技術者不足など、事業環境は加速度的に変化しています。当社グループは、水・環境インフラの持続を支える企業として、これからも時代に求められる技術開発に取り組んでいきます。
2022年度の新技術
- 浄水処理技術:STEP式傾斜管を初納入
- オゾン技術:オゾン・AOP 技術(民需向け)を納入
- B-DASHプロジェクト:「新たなリン回収システムによる下水道の資源化に関する実証事業」が令和4年度補正実施事業として採択
実験、研究用の当社設備
浄水場、下水処理場、および資源リサイクル施設の処理プロセスと技術
当社新技術開発の変遷(2007~2022年)
*「下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)」:Breakthrough by Dynamic Approach in Sewage High Technology Projectの略。国土交通省が2011年度(平成23年度)より実施している実証事業。新技術の研究開発および実用化を加速することにより、下水道事業における低炭素・循環型社会の構築やライフサイクルコスト縮減、浸水対策、老朽化対策等を実現し、併せて、日本企業による水ビジネスの海外展開を支援するために実施されている。
環境・先進技術の重点開発テーマ
当社グループの研究開発の根底にあるテーマです。重点課題と位置づけ、世界への貢献を目指します。
事例紹介
水道技術
浄水場全体の更新と運営・管理〈横浜市 川井浄水場〉
自然の力を利用した環境にやさしい水づくり
太陽光発電設備
配水池の屋根に太陽光発電パネルを設置。自然エネルギーの活用により、従来施設と比べて電力消費量を40%削減しています。
高低差を利用した無動力ろ過
道志川水源から届いた水を、膜ろ過装置で処理して配水池に送るまでポンプを使うことなく、水源から浄水場までの高低差を利用した無動力ろ過を実現しています。
オゾン/促進酸化処理技術
藻類が原因で発生するかび臭物質の高効率除去
都市近郊の湖沼などを水源とする浄水場では、藻類によるかび臭が問題となっています。この問題を解決するために、オゾン/促進酸化処理技術を開発しました。
通常のオゾン処理よりも高効率でかび臭物質を除去するとともに生物活性炭への負荷軽減により、長寿命化を可能にします。
オゾン/促進酸化処理の原理
オゾンに過酸化水素を加えることで、オゾンよりも強力な酸化力を持つヒドロキシルラジカル(・OH)の生成を促進し、かび臭物質などの難分解性物質に対する分解効率を高める方法です。また、過酸化水素には、オゾン処理の副生成物である臭素酸イオンの生成を抑制する効果もあります。
紫外線LED(UV-LED)を用いた浄水場向け紫外線処理装置
世界最大の処理能力と約45,000時間の長寿命化を実現
日機装(株)と日機装技研(株)、(株)扇港理研とともに、世界トップクラスの高出力UV-LEDを光源に用いた世界初となる浄水場向け紫外線処理装置を開発しました。
浄水処理において、クリプトスポリジウムなどの耐塩素性病原微生物対策の1つとして紫外線による不活化がありますが、世界的に水銀の規制強化が進む中、安全性の高いUV-LEDを用いた紫外線処理装置への関心が高まっています。
本装置は、UV-LEDの出力制御や照射の最適化などにより、紫外線水銀ランプの約3倍の長寿命化を実現し、水銀レスで安全性が高く環境負荷低減にも貢献します。
下水道技術
流動タービン焼却システム(東京都下水道局との簡易提供型共同研究)
排熱で駆動するタービンによるエコな焼却
下水汚泥を焼却する際、炉内に空気を送り込むブロワは電気を多く消費します。ブロワの代わりに、電力を使わず排熱を利用して駆動するタービンを採用した焼却システムを開発。従来システムに比べて電力消費量を約40%削減しています。
汚泥燃料化事業〈滋賀県 湖西浄化センター〉
下水汚泥を炭化物として資源化
下水汚泥は焼却処分し、残った焼却灰は産業廃棄物として処理されてきましたが、下水汚泥を炭化処理することによりバイオマス燃料を製造し、発電所や鉄鋼所でエネルギー資源として利用。
従来の焼却・溶融施設と比べて、二酸化炭素の排出量を年間で約11,651t(一般家庭 約3,800世帯分)削減しています。
汚泥処理施設等整備・運営事業〈愛知県 豊川浄化センター〉
下水汚泥を利用して発電
下水汚泥処理に伴い生成されるバイオガス(メタン)を利用して発電。再生可能エネルギー固定買い取り制度(FIT:Feed in Tariff)を活用することで、汚泥処理費用の低減と温室効果ガス排出量の削減を目指しています。
低含水率汚泥脱水機
脱水汚泥の低含水率化を実現
従来の1液型・2液型の汚泥脱水では、含水率や処理コストに課題がありました。当社グループが開発した後注入2液型のベルトプレス脱水機は、従来の2液型の長所はそのままに、少ない薬品投入量での低含水率化を可能にします。
リサイクル技術
今後の資源環境の指針を示す注目の現場
当社の竪型高速回転破砕機を導入した不燃・粗大ごみ処理施設
東京都西部には、小平市、東大和市、武蔵村山市の3市で組織する「小平・村山・大和衛生組合」が運営している不燃・粗大ごみ処理施設があります。同施設は、当社が建設から請け負い、2020年3月に竣工し、同年4月から運営を行っている新設の現場です。2022年4月には、DBO方式※1により24年間という長期にわたるO&M※2業務委託がスタートしました。
主な業務の範囲は、小型家電や家具などの家庭から出る粗大ごみと不燃ごみの受け入れから破砕処理までとなっています。破砕処理の工程においては、当社の独自技術である「竪型高速回転破砕機」が導入されています。
- DBO方式:公共施設などの設計・建設、運転・維持管理に民間を活用する手法
- O&M:運転・維持管理
新ごみ処理施設整備・運営事業
[現場名]
グリーンパーク小平・村山・大和
[事業名]
新ごみ処理施設整備・運営事業
[委託期間]
2022年4月1日~2046年3月31日(24年間)
[所在地]
東京都小平市中島町2-1
廃棄物選別機
高精度のごみの選別で、運営・運転費を低減
環境負荷を低減し、不燃ごみの再資源化を図るために、プラスチック類やペットボトルなどリサイクルできるものを選別します。ごみを選別する作業は、基本的に人の手で行われていますが、当社グループの廃棄物選別機は、精度の高い選別はもちろんのこと、省人化やコスト削減を実現します。
運営・運転費のライフサイクルコストを低減
廃棄物選別機は、不燃ごみを不燃系の「重量物」と可燃系の「軽量物」と細かな「細粒物」に選別が可能となり、手選別作業の負荷を軽減し省人化が図れるため、運営費を削減することができます。
●手選別作業員削減率10% ~ 30%
プラスチック製容器包装の選別処理に抜群の効果
プラスチック製容器包装をリサイクルする際は、禁忌品や金属などの異物混入が許されません。廃棄物選別機で金属などは重量物側に自動的に分けられるため、手選別時に発見しやすく確実な除去が可能となります。
精度の高い選別が可能に
廃棄物選別機をごみの手選別工程前に設置し、手選別作業の障害となるフィルム状、シート状の可燃物を除去します。手選別目的物の見逃しを防止し、精度の高い確実な選別が可能となります。
その他
作業の安全性を向上させる最先端技術 危険箇所アラームシステム
建設業界では、現場作業中に事故が起きないよう常に安全に配慮し、行動しています。
時には、現場作業中に注意していても、気付かないうちに開口部や充電部などの危険な箇所に近づいてしまい、思わぬ事故につながるリスクがあります。
このような不慮の事象を防止するため「危険箇所アラームシステム」を開発し、運用を開始しました。
危険に留意すべき箇所にビーコンをあらかじめ設置しておき、作業時に危険箇所に近づいてしまった場合、スマートフォンの警報と振動で作業員に知らせます。また、あらかじめ危険な箇所を認知することで、注意喚起による抑止力の効果もあります。