最終沈殿池の処理能力を向上するシステム
本製品は、国土技術政策総合研究所からの委託研究として実証実験を実施、評価を受けた「最終沈殿池の処理能力向上技術」(平成29年度B-DASHプロジェクト)について、「ファイナルフィルター」として製品化したものです。
上記研究結果は、国土技術政策総合研究所により「最終沈殿池の処理能力向上技術導入ガイドライン(案)」(2019年12月)として公表されています。
概要
「沈殿」+「ろ過」 最終沈殿池の処理能力を向上
我が国では下水道施設の老朽化が進み、本格的な改築・更新時期を迎えています。その管理者である自治体は、将来の流入水量等を考慮した最適な下水道計画の策定、見直しが求められています。
当社の「ファイナルフィルター」は、既存の土木躯体を活用し、最終沈殿池の処理能力を「量的」あるいは「質的」に向上させることができるものであり、自治体の課題解決に貢献できる製品です。
- 導入メリット※
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財政負担が大きい土木解体の新設を回避し、建設費を削減します。
さらに、新設用地を不要とし、用地の有効活用にも貢献します。- 最終沈殿池のストック低減【量的向上】
- 最終沈殿池の設備更新時における系列増設の回避【量的向上】
- 広域化・共同化における系列増設の回避【量的向上】
- 急速ろ過設備の新設の回避【量的向上】
※ 導入メリットの詳細は最下段にお示ししています。
特徴
・最終沈殿池の処理能力増強(量的向上)
本製品は、既存の最終沈殿池における沈殿分離と、ろ過による固形物の除去を組み合わせたものです。そのため、現有処理能力以上の水量を最終沈殿池に流入させた場合に、沈殿分離が不十分でも、下流側のろ過部によって固形物除去能力が補強され、従来の水質を維持できます。実証研究では、現有処理能力を最大2倍まで増強できることを確認しています。
・急速ろ過代替(質的向上)
現有処理能力以下の水量を最終沈殿池に流入させた場合は、沈殿分離が十分に機能するため、ろ過によってさらに固形物が除去され、急速ろ過同等の処理水質が期待できます。上記ガイドライン(案)において、急速ろ過法のひとつの技術として適用することが認められています。
・既存の土木躯体を活用
本製品はろ過部による圧力損失が小さく、反応タンクと最終沈殿池との水位差を利用してろ過を行うことができます。また導入に伴って、土木躯体の大きな改造も不要です。
・導入に伴う通水停止期間の短縮
ろ過部カセットは工場で製作し、現地に持ち込むため、現地工数を削減できます。クレーン等で吊り上げて設置ができる場合は、導入に伴う通水停止期間を大幅に短縮することができ、実証研究では、1池当たりの通水停止期間を約1週間に抑えることができました。
・自動洗浄による安定した連続運転
本製品は自動洗浄機構を組み込んでいます。洗浄は、ろ過部に空気を吹き込み、ろ過部内の固形物を剥離させることで行い、これにより人の手をかけず、安定した連続運転を可能とします。発生する洗浄排水はポンプで最終沈殿池の上流、例えば反応タンクと最終沈殿池の間に設けられた共通水路に返送されます。洗浄は約1回/日、洗浄時間は約40分/回です。
導入例とメリット
・最終沈殿池のストック低減
・最終沈殿池の設備更新時における系列増設の回避
多くの処理場で、将来的に流入水量が減少すると見込まれています。そのような背景から、汚泥かき寄せ機等の機械設備の更新、土木躯体の耐震化を進める場合は、その費用対効果を最大限に得るため、より慎重な設計・計画策定が必要になります。
本製品は、現有処理能力を「量的」に向上させることができるため、更新・耐震化の対象池を廃止あるいは停止させても、現有処理能力を維持することができ、既存設備のストック縮減に貢献します。また、設備更新時のためだけの系列増設を回避することが可能です。
設備更新時における導入ケース
・広域化・共同化における系列増設の回避
人口減少等を考慮した下水道計画の見直しにより、多くの自治体で集落排水を含めた複数処理場の統合が計画されています。この際、統合先の下水処理場の汚水量は、廃止される処理場の汚水量を合わせたものとなり、統合直後は統合先の現有処理能力を超える場合も想定されます。そのような場合は、当社の晴雨兼用高速ろ過技術および担体法等と本製品を組み合わせることで、系列を増設することなく、既存の施設で統合後の汚水量を処理することが可能となります。
処理場の統廃合時における導入ケース
・急速ろ過設備の新設回避
高度処理の導入に伴って、自治体によっては、財政負担が大きい急速ろ過設備を新設(土木躯体を含む)することが計画されています。
本製品を導入した最終沈殿池では、その処理能力を「質的」に向上させ、急速ろ過同等の処理水質が得られることから、急速ろ過の建設用地が不要となり、建設費の大幅削減という大きなメリットが期待できます。
急速ろ過代替としての導入ケース
平成29年度B−DASHプロジェクトの概要
最終沈殿池の躯体増設なしに、低コストの既設改造で最終沈殿池の処理能力を量的あるいは質的に向上させる技術の実証を目的として実施しました。
実証フィールドを提供する松本市は、松本市総合計画の中で、「下水道の適切な維持管理により、清潔で快適な生活環境の確保と河川などの水質保全を目指します」と掲げており、下水道施設の長寿命化対策に積極的に取り組んでいます。また当社は、先進のコア技術で水・資源・エネルギ 循環の創出を目指す水環境のトータルソリューション企業です。今後、松本市・JSを含めた3者の相互協力の下、下水道事業の発展および持続性確保に寄与する革新的技術の確立を進めていきます。
研究名称:最終沈殿池の処理能力向上技術実証研究
実施者:メタウォーター(株)・日本下水道事業団・松本市共同研究体
実証年度:平成29年~平成30年度