2014年のニュース

ニュースリリース
2014年3月31日

「無曝気循環式水処理技術実証事業」がB-DASHプロジェクトに採択~創造の国・土佐から、下水処理の革新を~

財政難、人口減少等の課題を抱える中小規模の下水道事業体の持続性確保に大きく貢献する技術実証を行います。

国土交通省が実施する下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)※において、高知市(市長:岡﨑 誠也、以下「高知市」)、国立大学法人高知大学(学長:脇口 宏、本部:高知県高知市、以下「高知大」)、地方共同法人日本下水道事業団(理事長:谷戸 善彦、本社:東京都文京区、以下「JS」)およびメタウォーター株式会社(社長:木田 友康、本社:東京都千代田区、以下「メタウォーター」)の4者からなる共同研究体が提案した「無曝気循環式水処理技術実証事業」が、平成26年度実施事業として採択されました。 本提案は、人口減少や財政難、技術者不足など多くの課題を抱える中小市町村の下水道事業の持続性確保に大きく貢献する技術であり、①電力量の大幅削減②安定した処理水質を実現③導入時に既設の大幅改造が不要などの特長があります。

従来の標準活性汚泥法と比較し、建設費、維持管理費、消費電力などの抜本的な低減を目指すもので、エネルギー需給の逼迫、地球温暖化対応等の社会的要請を踏まえ、下水道事業における省エネルギー化による経営安定化に資する技術です。

※新技術の研究開発及び実用化を加速することにより、下水道事業におけるエネルギー利活用の効率化やストックのLCC低減等を推進し、水ビジネスの海外展開を支援するため、平成23年度より国土交通省が実施している実証事業。公募・有識者審査により採択された革新的技術について、受託者が実規模プラントを下水処理場に設置し、コスト縮減、温室効果ガス排出量削減等の実証を行うものです。

事業の概要

実証フィールドを提供する高知市は、「高知市下水道中期ビジョン」(平成24年 策定)の中で「環境と共生した持続可能な循環型社会の創出」を掲げており、健全な水環境を次世代へつなげていくための取り組みを行っています。また、メタウォーターは、先進のコア技術で水・資源・エネルギー循環の創出を目指す水環境総合エンジニアリング企業です。今後、高知大、JSを含めた4者の相互協力の下、下水道事業の発展および持続性確保に寄与する革新的技術の確立を目指します。
実 施 者 :高知市・高知大学・日本下水道事業団・メタウォーター共同研究体
実証フィールド:高知市下知下水処理場(高知県高知市小倉町5-25)
実証規模 :6,400m³/日
現処理法 :標準活性汚泥法 等

事業予定

上記フィールド内に実証設備を建設し、実証します。

本実証事業の特長

我が国では、急激な人口減少・高齢化社会が進んでおり、今後の下水道事業経営は厳しさが増すことが予想されています。中小規模の下水処理場ほど単位処理水量あたりの使用電力量が高くなる傾向にあり、省電力化、ライフサイクルコストの削減など、多くの課題を抱えています。

本技術は、国内の下水処理水量で75%を占める標準活性汚泥法の代替技術として、使用電力量を70%程度削減できる技術であり、処理場の省電力化等に貢献するものです。

(1)使用電力量の大幅削減

従来の標準活性汚泥法では、生物反応槽に大量の空気を送り込む送風機設備を必要としました。本技術では、大気中の酸素を取り込む気液接触方式に変更することにより、従来コストが嵩んでいた送風機設備の電力使用量を削減し、低動力で酸素供給を行います。

水処理システム全体の処理コスト(単位処理水量あたり)

従来技術 (標準活性汚泥法) 革新的技術
0.2kWh/m³ 0.06kWh/m³ (目標) 〔従来比▲70%〕

(2)安定した処理水質の確保

本技術は,1池目(従来の最初沈殿池)から生物処理ができるよう、2池目(従来の生物反応槽)で処理した水を1池目に循環します。これにより1~2池の全体を使って、有機物(BOD)の生物分解・除去を安定して行うことが可能となります。

また3池目(従来の最終沈殿池)は、物理的なろ過を行うことにより、微細な固形物(SS)も除去でき、より安定的に良好な処理水質を確保します。

本技術は、制御の自動化により操作が容易となり、運転者の高度な経験・技術を必要とせず安定した処理を実現します。

(3)既存処理場への適用容易性

本技術は、既存土木水槽を活用することを前提にしています。

面積は、従来技術(標準活性汚泥法)の約50%となり、また高さも既存水槽の深さに納まるため、二重覆蓋のある下水処理場にも設置することが可能です。

これにより、今後、水量が増加する下水処理場においても、新たな土木躯体の増設コストを抑制できます。 

さらに将来の人口減少時には、処理水量に合わせてユニット数を変更できるため、電力使用量を削減することが可能です。

以上