中期経営計画

当社を取り巻く事業環境と課題

国内の上下水道・資源環境事業においては、施設の老朽化や事業収入の減少に加え、技術職員不足、多発する自然災害への対応などが喫緊の課題となっています。特に我が国の人口は2056年には1億人を割り込むとの予測もあり、上下水道・資源環境インフラは、今後ますます、その維持が困難になると予想されます。

一方、海外でも気候変動や地球温暖化、海洋汚染などの環境問題に加え、甚大災害への対応が課題となっているほか、水資源や希少資源の不足も深刻化しています。

このような状況の中で、当社グループは設立20周年を迎える2028年3月期に設立時の2倍となる売上高2,000億円の達成を目指す「中期経営計画2027」(2025年3月期(2024年度)~2028年3月期(2027年度)の4事業年度)を策定しました。

同計画では、①「各事業分野の成長戦略」 ②「企業価値向上に向けた投融資戦略」 ③「サステナビリティに関する取り組み」を重点施策として掲げています。この3つの重点施策の推進により、政府が主導する「ウォーターPPP」への対応力を強化するとともに、次のステージとして設立30周年となる2037年度を見据えて、事業拡大と基盤強化に取り組んでいきます。

当社を取り巻く事業環境と課題

  • 国内において今後加速する課題(人口減少、施設の老朽化、財政難、技術者不足)
  • 環境問題(気候変動・甚大災害、生物多様性の喪失、資源不足)の深刻化
  • 新たな公民連携方式「ウォーターPPP」の導入に向けた対応力強化(経営リソース配分)
  • 人材獲得競争激化に向けた従業員処遇改善(ベースアップによるインフレ対策)
  • 生産性向上と競争力強化に向けたDX投資

好調な受注により売上高は2,000億円へ

足元の好調な受注高と受注残高を背景に、これまでの念願であった"売上高2,000億円の達成"がいよいよ見えてきました。受注案件を着実に売上展開するとともに、温室効果ガスの削減に貢献する製品やシステムの市場投入などにより、各事業分野における成長戦略を実行していきます。

また、将来に向けた人的投資や基幹システムの更新、DX投資、エンジニアリング改革などの基盤強化にも並行して取り組み、「中期経営計画2027」の最終年度となる2028年3月期の目標として、受注高2,000億円以上、売上高2,000億円、営業利益130億円(営業利益率6.5%)、当期純利益85億円、ROE10%以上を目指します。

*参考:'24/3期受注高 2,119億円(前期比+185億円)、'24/3期末 受注残高 2,751億円(前期比+464億円)

初年度
'25/3
予想
最終年度
'28/3
目標
増減
受注高 1,900億円 2,000億円以上 +100億円以上
売上高 1,700億円 2,000億円 +300億円
営業利益
(営業利益率)
90億円
(5.3%)
130億円
(6.5%)
+40億円
当期純利益 61億円 85億円 +24億円
ROE 8%以上 10%以上 +2%以上

3つの重点施策

1.各事業分野の成長戦略

環境エンジニアリング事業(EE事業)

水環境事業
  • 温室効果ガス排出削減貢献 製品・システムの市場投入
  • 維持管理を起点とした提案、最適なLCCの追求
資源環境事業
  • 更新需要増に伴うDBO案件増加への対応力強化、パートナー企業との連携強化

システムソリューション事業(SS事業)

システムエンジニアリング事業
  • 監視制御システムの更新需要への対応、エンジニアリング手法改革による業務効率向上
  • データ連携による品質向上と業務効率化、コストダウン
カスタマーエンジニアリング事業
  • 保守点検、修繕工事の実績やノウハウを活用した提案力の強化
  • WBC(ウォータービジネスクラウド)の拡販と活用による新たな顧客、新規事業の獲得

運営事業

  • 「ウォーターPPP」への対応力強化、新たなビジネスモデル創出と具体化
  • 自社運営機場の業務改善、効率化などオペレーションサポートセンター(OSC)の活用による競争力強化

海外事業

  • 再生水市場、微量汚染物質などの高度処理プロセスへの対応
  • グループ企業間の連携強化によるシナジー創出、現地パートナーとの連携強化

2.企業価値向上に向けた投融資戦略

3.サステナビリティに関する取り組み

  • 事業拡大に向けた成長投資(研究開発、M&A投資、ウォーターPPP)
  • 将来の安定成長に向けた基盤投資(人的投資、DX投資)
  • 6つの重点課題(マテリアリティ)への取り組み
    (水環境・循環型社会・温室効果ガス排出削減・地域社会・人財・ガバナンス)

"機電融合"の進展により、顧客ニーズに最適なLCCの実現へ

当社グループは2008年の設立以来、公民連携(PPP)における事業運営を担える企業を目指し、日本ガイシ株式会社を由来とする「機械」技術と富士電機株式会社を由来とする「電気」技術の融合="機電融合"に加え、独自のICTとノウハウを有することを強みとしてきました。設立から16年を経て"機電融合"が進んだ結果、当社グループは上下水道における公民連携事業の約3割(当社調べ)の案件に参画を果たすことができました。

一方、高度経済成長期に設備の新設や更新により拡大基調を維持してきた上下水道施設の建設投資は、上下水道普及率の高まりや節水型家電の普及に加え、将来の人口減少を見越し、1900年代後半にピークアウトしました。

足元では、料金収入の減少による自治体の財政逼迫もあり、上下水道の建設投資は"スクラップ&ビルド型"から更新や改良投資が中心となり、緩やかな増加にとどまっています。

このような中、当社グループでは施設の長寿命化や延命化を視野に入れ、顧客への最適なLCC(ライフサイクルコスト)を目指す諸施策を実施していきます。

2024年4月1日付の組織変更は、マネージメント・アプローチの観点から経営資源の配分に係る意思決定と事業効率を高めることに主眼を置いたものですが、もう一つの狙いとしては、長期にわたる事業運営と点検・修繕・維持管理を起点とし、最適なEPC(設計・建設)を追求する提案力の強化にあります。

新しい組織では、機械設備における設計・建設と保守・維持管理を「環境エンジニアリング事業(EE事業)」が担い、電気設備における設計・建設と保守・維持管理を「システムソリューション事業(SS事業)」が担うことで、ぞれぞれEPC機能と保守・維持管理機能を一体化させ、一気通貫で事業を推進できる体制としました。また国内の浄水場・下水処理場・資源リサイクル施設の運営を担う「運営事業」と、海外の浄水場・下水処理場向け施設・設備の設計・建設および保守・維持管理と民需事業を担う「海外事業」をおのおの独立させました。このように各事業部門を連携させることにより、全社の成長を促す形に移行させています。

新セグメントの機能施策
新セグメントの損益イメージ

「ウォーターPPP」への対応力強化

将来の本格化する公民連携を見越して設立された当社グループは、全国各地の機場の運転管理を受託しているほか、直近では宮城県、熊本県におけるコンセッションなど、水道・工業用水道・下水道分野で多くのPPPプロジェクトに参画しています。

2023年6月、政府により公表された「ウォーターPPP」は、2031年までに上水道100件、下水道100件、工業用水道25件、計225件をターゲットとしていますが、当社グループは、これを最大のチャンスと捉え、これまで手がけてきた案件の実績・ノウハウを生かして提案活動を行うとともに、既受託案件の第2期プロジェクトへの対応と、新規案件の獲得に全社を挙げて取り組みます。

全国機場の運転管理受託実績

人的投資("人財"獲得と教育)

「ウォーターPPP」においては、施設や設備の施工図面の作成や積算などに必要となる要件を自治体から民間に提示する従来の「仕様発注」ではなく、自治体が要求する品質やコスト、期間などの性能を満たす「性能発注」への対応が求められます。

また、これまで自治体が行ってきた経営計画策定や料金徴収、クレーム対応などの業務が受託範囲となるため、従来の設計・建設、維持管理業務に加え、設計部門や現場の体制拡充を図る必要があり、新たな"人財"の獲得と、その育成を並行して進めることが必要となります。

「中期経営計画2027」では、将来本格化する「ウォーターPPP」への備えとして、人的投資による「基盤強化」とともに、生産性の向上と競争力の強化に向けたDX投資、エンジニアリング改革による収益性の維持、向上に取り組みます。

第2期プロジェクトへの対応

エンジニアリング改革

「中期経営計画2027」におけるもう一つの目指すべき方向は、エンジニアリング改革の推進です。

設計・建設から維持管理における各業務プロセスのデータを連携させ、活用していくことによりプラントライフサイクルコストの最適化と、最適なエンジニアリング手法を確立することが最大の狙いです。

例えば、まず「ベーシックエンジニアリング」ではオブジェクト化された機器や部品を用いて設計を行うことにより、基本設計から詳細設計のデータ活用範囲が飛躍的に拡大し、次のステップである「デジタルエンジニアリング」では、前工程で作成された機器や配管データを用いて仮想空間上で施工設計を行うことができます。

この結果、現地調査の工数削減や施工現場において設備と配管が干渉するといった手戻りやリスクが軽減され、施工期間の短縮や品質の向上が図れます。

さらにはデータの一元化により、プラント運転管理における定期修繕の最適化や障害復旧の迅速化、最適な巡視点検ルートの設定、BCP訓練といった一連のオペレーションとメンテナンス業務の改善が期待できます。

このようにプロセス全体でデータ連携やアセットの活用が可能なプラットフォームを構築し、一連のサイクルを回していくことで、顧客にとって最適なLCC(ライフサイクルコスト)の提供と、当社の生産性向上を目指していきます。

プロセス全体でデータ連携、アセット活用による最適プラットフォーム(イメージ)