Project1 世界初 汚泥ガス化炉への挑戦 使命感とチームワークで、新技術のプラントを超短期で完成へ PROJECT DATA Name:汚泥ガス化炉 Place:清瀬水再生センター(東京都) Date:2010年完成・稼動開始 Keywords:世界初・地球温暖化対策創エネルギー

chapter1『研究・開発』世界初のガス化炉を目指し、試行錯誤が続く。 → chapter2『受注~設計』ついに実機化へ!立ちはだかる課題。 → chapter3『建設工事~試運転』自分の仕事をするしかない―時間との戦い。 → chapter4『完成~運転管理』ついに完成!そして運転管理という新たなステージへ。

2010年7月、東京都の清瀬水再生センター。多摩地区でも最大級の処理能力を誇るこの下水処理場で、ある施設の完成記念式典が行われていた。
式典には都知事や国土交通省の技監を始めとする多くの来賓が出席しており、この施設への関心の高さを示していた。
その名は、汚泥ガス化炉施設。
下水処理の過程で発生する汚泥は、通常は廃棄物として焼却処理される。それを少ない酸素で蒸し焼きにしてガス化し、発電に用いるという世界初の施設である。大きな省エネ効果があるだけではなく、通常の焼却処理で発生する温室効果ガスが出ないことから、地球温暖化対策の切り札としても注目されている。

「温暖化対策として、こういった設備をどんどん作るべき」

式典のスピーチで都知事がこう評し、華々しく稼動した汚泥ガス化炉。
世界初の設備が完成するまでには、メタウォーターの社員たちの大きな苦悩と連携があった。

世界初のガス化炉を目指し、試行錯誤が続く。研究・開発

図:温室効果ガス削減効果

汚泥ガス化炉の開発は、1998年まで遡る。
メタウォーターの前身である日本ガイシが、焼却炉の消費電力の削減を目指して、廃棄物向けのガス化技術をドイツから導入し、廃棄物のガス化について自主研究を開始。2003年からはNEDOの委託研究という形になり、2005年には東京都東部スラッジプラント内に実証試験設備を設置し、下水汚泥のガス化は研究が続けられていった。
温度設定、機器の調整、予期せぬタールの発生等難題の連続に対し、実験と改造の繰り返しだったという。

「とにかく探究心が強く、こだわりの強いメンバーばかりだった」
当時からプロジェクトに携わっていた、技術開発の三島は語る。
この時期、職場では常に議論が交わされ、白熱して周りの迷惑にならぬよう、場所を移すこともしばしば。ガス化炉を実現させ、エネルギー問題に貢献したい!という各々の思いが、議論を熱くしていた。

3年間とされていたNEDOの委託期間が過ぎてもなお、技術的な確立が不十分だったため、日本ガイシは自主研究の継続を決断。さらに2年間の試行錯誤を経て、ガス化炉は1ヶ月の連続運転を実現したのだった。また、理論上は可能となっていた温室効果ガスの大幅削減一般的に行われている下水汚泥の焼却処理では、CO2の310倍もの温室効果を持つN2O(一酸化二窒素)が発生する。しかし、少ない酸素で汚泥を蒸し焼きにする汚泥ガス化炉ではこのN2Oの生成を抑えることができる。も実証され、省エネだけでなく温暖化防止にも効果があるものとして汚泥ガス化炉への期待が高まっていった。

「これならいける!」

2007年秋、省エネ効果と温室ガス削減効果を武器に、東京都清瀬水再生センター「汚泥ガス炉DBO事業」の公募への挑戦が決まった。
この頃、日本ガイシの水環境部門は独立して「NGK水環境システムズ」となっており、翌春には富士電機水環境システムズとの合併を控え社内が慌しい時期だった。
公募に出す提案書の作成時点から、富士電機水環境システムズのメンバーとの共同作業が始まっていたのだった。いくら合併して同じ会社になることが決まっていたとは言え、分野も風土も違う他社との共同作業は難しい。「社会に貢献したい」という熱い思いが、スタッフを一つにしていた。

ついに実機化へ!立ちはだかる課題。受注~設計

優先交渉権獲得の知らせが届いたのは、合併直前の2008年3月だった。
有利ではと目されていた他社を破り、試験データや提案内容が高く評価されての優先権獲得。「メタウォーターの船出を祝うようだ」と社内は沸きかえった。

しかし、実作業を担当する人間には、喜び以上に大きな不安と懸念があった。
「実験では確かにうまくいった。だが、実規模へのスケールアップが本当にできるのだろうか……」
設計の井上もそんな一人だった。
プラントの片隅に作られた実験設備と本物のプラントでは大きさの規模がはるかに違う。また、実験では1ヶ月しか連続運転をしていないが、プラントは長期にわたって安定稼働が求められる。研究の初期から参加していた井上は、理論通りにいかない難しさをよく知っていた。
不安の原因はそれだけではなかった。さまざまな事情により、契約締結から工事完了までが2年と定められていたのだ。清瀬水再生センターは東京都内でも有数の下水処理場であり、何よりこの汚泥ガス化炉は前例のない技術。3年はかかっても仕方のない作業だった。

「時間が足りない!」

悲嘆に暮れている暇等なかった。設計・建設・試運転、すべての作業を最短で仕上げていかなければならない。
「とにかく徹底的に課題を洗い出そう。どういう流れで作業をするか、まずプロセスの設計が成功の鍵だ!」
設計や技術の担当者はもちろん、営業や建設、完成後の運転管理の担当等、全員で課題の洗い出しが行われた。
ぶつかり合いも多かった。

だが、ぶつかり合っているうちに目的の違いが見えてきた。「いいプラントを作りたい」という思いは一緒でも、「いいプラント」の定義はセクションによって異なるという現実が露わになってきた。
開発担当ならば、性能のいいものを作りたい。技術は、多少性能が落ちても、安定して稼働するものを良しとする。建設現場に携わる者なら、施工管理がしやすく安全に作業できることが何よりだし、完成後の運転に携わる者は、運転管理のしやすさを求める。
「役割や立場が違えば価値観も違うと分かったのが大きな収穫だった」と後に井上は語っている。それぞれがプロフェッショナルとして知見を出し合い、時には理解して引くこともあった。そうして通常の10倍はDR(デザインレビュー)をしたという。厳しい現状を全員が共有しながら、緻密に工程が決められていった。

自分の仕事をするしかない――時間との戦い。建設工事~試運転

「工事が動き始めた」

超短期のため、できるところから工事を始めていくしかない。工事が始まっても、細かな仕様の設計等は並行して進められていた。当然、作業をしていると予期せぬ問題も多々発生する。だが、余程のことがないと関係者全員が集まって協議する時間は取れない。基本的に担当者ベースで判断せざるを得なかったが、それでも大きな支障がなく進んだのは、初期段階で全員が現状や課題をしっかりと共有していたからに他ならない。濃い議論の時間がそれぞれの役割を明確にし、信頼感を育んでいた。

「何てまじめな集団なんだろう!」
工事が動き始めた2009年に入ってからプロジェクトに加わった営業の小嶋は、メンバーの熱さ、信頼感に驚いたという。
「とにかく自分の仕事をやるしかない。彼らが作業しやすい環境づくりをしよう」
営業の仕事は、お客様(この場合は東京都下水道局)との調整や交渉だ。情報を遅滞なく伝達し、円滑に作業が進むよう心掛けた。汚泥ガス化炉は世界初の技術ゆえに、要人や他の地方自治体、学会等からの見学者も多く、その対応にも苦心した。

そう、各々がひたすら自分の仕事をするしかなかった。

建設現場も多忙を極めていた。新技術ゆえに機器は従来施設の3倍以上にのぼり、また、短期での工事を完遂するためには大量の作業員が必要だった。だが、工事の間も清瀬水再生センターでは下水処理が動いている。稼働中の処理場の限られたスペースで作業をしなければならなかった。さらには新型インフルエンザの流行や台風等の悪天候にも見舞われる中、建設工事は続いた。

設備が動かせるようになると、即座に試運転が始まった。新技術ながら通常の半分にあたる3ヶ月しか試運転の時間が取れなかった。設備停止等のトラブルが頻発する中、実際の運転に関わるスタッフも早期から参加しており、試運転では異例ともいえる最大50名の及ぶスタッフが関わっていた。最後の最後で落雷による停電トラブルがある等、一筋縄ではいかない道のりだった。

ついに完成!そして運転管理という新たなステージへ。完成~運転管理

2010年7月、スタッフ全員の頑張りの甲斐あって、驚異的ともいえるスピードで汚泥ガス化炉は完成し、稼動を始めた。
以降順調に稼働率を上げており、同年の11月には、東京都の「東京スピリット賞」を受賞し地球温暖化防止への取り組みが認められる等高い評価を受けている。

「しかし、これはあくまで始まりに過ぎない」

清瀬水再生センターの汚泥ガス化炉プロジェクトは、設計・建設・運転管理まで一貫して民間の技術を投入して施設を長期間維持するDBO方式を採用しており、契約期間は20年に及ぶ。今後は設備の経年劣化や故障も視野に入れた対策を確立していかなければならない。

二号機三号機のプロジェクトも動き始めており、世界初への挑戦はまだ続いている。この汚泥ガス化炉プロジェクトに新たな風を吹き込む人物は、これからメタウォーターに入るあなたかもしれない。

Member's voice

開発

初めて汚泥によるガスで発電できたときのことが忘れられません。たどり着くまでが長かったので感動も格別でした。汚泥ガス化炉は、従来は単に処理していた汚泥からエネルギーを回収し、なおかつ安定して処理できる技術として今後ますます注目されると考えています。今後も責任を持って新商品を提案できるよう頑張りたいです。

設計

検査のときに、お客様から「メタウォーターの汚泥ガス化炉は本当によくやってくれている」と労われたことが印象に残っています。メタウォーターは業界のリーディングカンパニーとして新しいことを生み出していかなければならないので、今回の経験が、さまざまな新規プロジェクトに影響を与えていくと思います。

営業

この汚泥ガス化炉は汚泥処理の一つの将来像を示していると考えています。今後はこの方式をさらにブラッシュアップさせて全国に展開していきたいです。プロジェクトを振り返ると、これまでに参加した他のプロジェクトよりもグループの枠を超えた連携が求められ、社内連携の重要性を改めて実感しました。この繋がりをこれからも大事にしたいです。

※記事内容は、取材当時のものです。

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